「お客様の求めるものを提供しようにも、何から取り掛かればいいかわからない。」「お客様離れの原因がわからない。」マーケティングにおいて、お客様の潜在的なニーズや不満を知ることは自社の売上アップや業務改善に欠かせない要素です。この記事では、「マレーの欲求リスト」と呼ばれる人間の欲求を定義したリストと「マズローの欲求5段階説」と呼ばれる欲求に順番をつけたもをビジネスに活用する方法についてご紹介します。1.マレーの欲求リストとは「マレーの欲求リスト」いうものを聞いたことはあるでしょうか?心理学者のマレー(Murray)が1938年に作成した人間の動機付けを解明するために定義した40種類の欲求を分類したリストです。消費者心理に対してのアプローチとして非常に有効で、マーケティングの世界でも広く活用されています。生命維持に必要な「生理的欲求」12種吸気・飲水・食物・感性・排泄・性的・呼気・授乳・暑熱回避・寒冷回避・毒性回避・障害回避社会的な生活を営む上で重要な「社会的欲求」28種獲得・保持・保存・整然秩序・構築・承認・達成・顕示・優越・不可侵・防衛・屈辱回避・反動・支配・服従・模倣・自律・攻撃・屈従・対立・親和・養育・援助・拒絶・認知・説明・非難回避・遊戯これらの羅列された欲求が、人間の行動の根底にあるという考えのもとつくられたリストです。人間の三大欲求、「食欲」「性欲」「睡眠欲」をさらに細かく分類したものというイメージですね。この中のどれに属しているのかを掘り下げることにより、お客様の潜在的なニーズや不満を具体的に改善案を出すことができます。では、詳しい内容を見ていきましょう。2.マレーの欲求リスト「生理的欲求」と「社会的欲求」とは生理的欲求(臓器発生的欲求)12種人間が生きていく上で必要な、体が求める欲求。欠乏から摂取に導く欲求1吸気欲求酸素を求める2飲水欲求水を求める3食物欲求食べ物を求める4感性欲求身体的な感覚を求め、楽しみたい膨脹から求める排泄欲求5排尿・排便欲求尿や便を排泄したい6性的欲求性的関係・快楽を得たい7呼気欲求息を吐きたい8授乳欲求授乳したい危機から求める回避欲求9暑熱回避欲求適正体温を維持したい10寒冷回避欲求適正体温を維持したい11毒性回避欲求有毒物を回避し逃れたい12障害回避欲求病気・怪我・死を避けたい社会的欲求(心理発生的欲求)28種社会生活や人間関係において、心が求める欲求物質に関する欲求1獲得欲求お金や財産など、色々なものを手に入れたい2保存欲求モノを集めて傷つけないように保存したい3秩序欲求モノを整理整頓して綺麗にしたい4保持欲求お金やモノをいつまでも手放すことなく持ち続けたい5構成欲求モノを組み立てて、築き上げるたい野心や向上心に関係する欲求6優越欲求他人よりも優れていたい7達成欲求困難を乗り越えて成功したい8承認欲求他人に認められ、尊敬されたい9顕示欲求他人の注意を引いたり、楽しませたい自己防衛や保身に関係する欲求10不可侵欲求自尊心を傷つけたり、批判から逃れたい11屈辱回避欲求失敗して笑われたり、屈辱や恥ずかしさから逃れたい12防衛欲求非難や軽視から身を守りたい13中和欲求失敗をリベンジしたり、弱さの克服をしたい支配や権力に関係する欲求14支配欲求他人をコントロールしたり影響を与えたい15服従欲求優秀な人に従ったり、協力したい16同化欲求他人と同一視して感情移入したい17自律欲求他人の支配や影響に抗い、独立したい18対立欲求他人と違う行動をとったり、ユニークな存在になりたい19攻撃欲求他人を意地悪したり、攻撃して奪いたい20屈従欲求他人に降伏したり、痛みや不幸を楽しみたい禁止に関係する欲求21非難回避欲求法律やルールに従いたい愛情に関係する欲求22親和欲求他人と交流したり、集団に加わりたい23排除欲求他人を無視したり、他人を排除したい24養護欲求困っている人を助けたり、同情してもらいたい25救護欲求愛されたり、許されたい遊戯に関係する欲求26遊戯欲求リラックスしたり、気晴らしを楽しみたい情報に関係する欲求27認知欲求知識を学んだり、好奇心を満足させたい28証明欲求情報を提供したり、他人を教育したい3.自社のビジネスにおける、お客様に「マレーの欲求リスト」を当てはめてみよう「マレーの欲求リスト」をマーケティングで活用するために、以下を考えましょう。自社が提供しているサービスは、お客様にとって「マレーの欲求リスト」のどの欲求に当てはまるか?「マレーの欲求リスト」の欲求で、自社がお客様に提供できていないもの、または訴求の弱いものはないか?自社が提供しているサービスは、お客様にとって「マレーの欲求リスト」のどの欲求に当てはまるか?自社のサービスがお客様の「マレーの欲求リスト」のどの部分に当てはまるか考えてみましょう。例えば、食品デリバリーサービスであれば、食物欲求:食事を提供することにより、人々の空腹を満たします。回避欲求:配達員の安全な働き方や食品の衛生管理に配慮し、安全な食事を提供します。親和欲求:家族や友人との共同の食事体験を提供し、社会的なつながりを促進します。承認欲求:お客様のニーズに応えるカスタマイズオプションや、評価やフィードバックを重視します。認知欲求:特別なメニューオプションを提供し、食に対する個々の好みを満たしますとなります。オンライン教育プラットフォームであれば、親和欲求: 学習者がコミュニティに参加し、他の学習者や教師とつながることができます。承認欲求: 学習者が成績や進捗を評価され、教師や他の学習者からのフィードバックを受けることができます。認知欲求: 学習者が自己成長やスキルの向上を追求し、自己発展の機会を提供します。となります。これらの例は一部ですが、提供するサービスが「マレーの欲求リスト」の要素にどのように関連しているかを考える際の参考になるかと思います。個々のサービスや業界によって異なる要素が存在するため、具体的なサービスに対してより詳細な分析が必要となります。マーケティング戦力ではお客様の目線に立って、考えることが重要となります。「マレーの欲求リスト」で、自社がお客様に提供できていないもの、または訴求の弱いものはないか?次に、自社のサービスがお客様に提供できていないところはないかを考えていきましょう。お客様目線になり求めていることを理解することで、何をするべきなのかが見えてきます。今扱っているサービスがどの欲求を満たすのかを見直し改善することで、現在のビジネスの地盤を固めることができます。4.「マレーの欲求リスト」を日本人学者がさらに細分化!59種類の心理発生的欲求「マレーの欲求リスト」はマーケットにおいて、お客様の潜在的なニーズや不満を知ることは自社の売上アップや業務改善に欠かせない要素ですが、分類しづらい場面も多くあります。そのため、心理発生欲求を細かく分けたものが誕生しました。日本人学者の荻野七重氏と斎藤勇氏が「マレーの欲求リスト」の心理的欲求28種類を、さらに59種類に細かく分けたのです。59種類と数は多いのですが、各欲求がグループで分かれているので順を追っていけばどの欲求に当てはまるのかがわかるようになっています。そのリストを元に、日本人学者がさらに心理発生的欲求を細かく分類され、さらに踏み込んだマーケティング戦略を立てられます。内容を見ていきましょう。59種類の心理発生的欲求優越・支配に関係する欲求1自尊欲求自分を認めて自尊心が傷つかないようにしたい2競争欲求他人と争いたい3優越欲求他人よりも優れていたい4攻撃欲求武力を使って相手を攻撃したい5反発欲求やられたらやり返したい6流行欲求流行の最先端の物を手に入れたい7自己顕示欲求注目を集めたい8指導欲求リーダーシップを発揮して集団をまとめたい9名誉欲求社会的に名誉のある地位につきたい10支配欲求人に指示や命令をしたい11権力欲求地位や権力を手に入れたい情的支配に関係する欲求12愛情欲求愛する人のために行動したい13恋愛欲求好意を寄せる人に好かれたい14愉楽欲求みんなと一緒に楽しみ騒ぎたい15自由欲求自由な生活をしたい16自己表現欲求自分の個性をアピールしたい17不満解消欲求ストレス解消のために気分転換したい積極的活動に関係する欲求18達成欲求困難を乗り越えて目標を達成したい19内罰欲求自分に悪い点はないか反映したい20自己成長欲求自分自身を充実させ成長させたい21持続欲求最後まで根気よく続けたい22自己実現欲求人生計画をしっかり立てて、日々努力したい23知識欲求知識を増やし多くのことを学びたい24自己主張欲求自分のことを主張することを求めたい25批判欲求人が悪いことをした時に指摘し正したい26趣味欲求趣味を持ち続けたい27感性欲求美しいものを見て聴いて、感動したい28理解欲求物事の因果関係を理解したい29他者認知欲求他人の性格などを理解したい30好奇欲求新しいことや珍しいことを経験したい関係の形成に関係する欲求31秩序欲求社会生活において規則やルールを守りたい32援助欲求弱い人や困っている人に手を差し伸べたい33集団貢献欲求所属している集団のために全力を尽くしたい34社会貢献欲求住み良い社会を作るために貢献したい35教授欲求自分の得意分野を、先生として教えたい36自己認知欲求自分がどんな性格なのかを知り理解したい37承認欲求できるだけ多くの人から好かれたい38自己開示欲求親しい人に自分のことを知ってもらいたい保身に関係する欲求39屈辱回避欲求人前で笑われるようなことを避けたい40同調欲求仲間と一緒に同じことをしたい41嫌悪回避欲求人に嫌悪感を持たれないようにしたい42批判回避欲求人からの批判を避けたい43服従欲求上の人の指示に従って行動したい44優位欲求自分が他の人よりも優位でありたい45譲歩欲求争いを避けるために譲ることを求めたい46安心欲求失敗を避け安心な方を選びたい47気楽欲求無理をせずのんびりと人生を送りたい48挑戦欲求危険なことでも挑戦したい49安全欲求身に危険が生じるようなことを避けたい50拒否欲求嫌いな人とは付き合わないようにしたい51金銭欲求お金を確保したい52生活安定欲求安定した生活を送りたい協調に関係する欲求53依存欲求誰かに助けてもらいたい54親和欲求友達との交流を深めたい55協力欲求仕事やプライベートでも協力したい56孤立欲求できるだけ1人でいたい57恭順欲求信頼できる指導者に従いたい58自己規制欲求規則正しい生活を送りたい59迷惑回避欲求人に迷惑をかけないようにしたい以上になります。「マレーの欲求リスト」と比べると、さらに細かいマーケティング分析が可能となるためぜひ活用してほしいです。5. 59種類の心理発生的欲求を活用しよう59種類の心理発生的欲求をマーケティングに活用するために、以下を考えましょう。・自社が提供しているサービスは、お客様にとって59種類のうちどれに当てはまるのか?・自社がお客様に提供できる強み、または改善できる弱みはないか?自社が提供しているサービスは、お客様にとって59種類のうちどれに当てはまるのか?自社のサービスがお客様の心理発生的欲求のどの部分に当てはまるか考えてみましょう。例えば、旅行会社で「若者の旅行客が最近利用が少なくなったのでなんとかしたい」という問題を例として挙げてみます。まずは、若者の旅行客の欲求を知るために59種類のどれに当てはまるか考えてみます。優越・支配に関係する欲求から流行欲求:流行っている、人気な場所に旅行してみたい。自己顕示欲求:素敵な旅行写真を撮って友達に見せたい。情的支配に関係する欲求から不満解消欲求:ストレス解消のために気分転換したい保身に関係する欲求から孤立欲求:一人になりゆっくりと過ごしたいと読み取れたとしたら、一人でも参加しやすい「ソロ活旅行プラン」などが提案できます。これはほんの一例で、個々のサービスや業界によって異なる要素が存在するため、具体的なサービスに対してより詳細な分析が必要となります。お客様の目線に立って、考えることが重要です。自社がお客様に提供できる強み、または改善できる弱みはないか?お客様が求めているものが、分かったらその中で自社が提供できるサービスを考えていきます。または、提供できていないものはないかを考えます。お客様目線になり求めていることを理解することで、何をするべきなのかが見えてきます。今扱っているサービスがどの欲求を満たすのかを見直し改善することで、現在のビジネスの地盤を固めることができます。6.人間の欲求の移り変わりを示す指標、「マズローの欲求5段階説」マーケティングに用いられる欲求として、「マズローの欲求5段階説」があります。「マズローの欲求5段階説」と「マレーの欲求リスト」は似て非なるもので、場面により使い分けします。では、「マズローの欲求5段階説」がどのようなものかを見ていきましょう。マズロー氏とはどんな人物なのか?最初に、「マズローの欲求5段階説」を手がけたアブラハム・ハロルド・マズロー(Abraham Harold Maslow)について簡単に解説します。アブラハム・ハロルド・マズローは、1908年にニューヨークのブルックリンで生まれた心理学者です。彼は心理学の修士号、博士号を取得し、ブルックリンの市立大学で教授を務めました。特に、人間の基本的な欲求を階層化した「マズローの欲求のピラミッド」で有名です。この理論は1943年に発表され、人間の自己実現を追求する研究において重要な役割を果たしました。彼の仕事は心理学だけでなく、文化や経済など多岐にわたる分野に影響を及ぼしましたが、1970年に心臓発作で亡くなるまで、彼の学問的計画は未完成のままでした。しかし、彼の理論はお客様の欲求レベルを理解するための研究に今日でも活用されています。7.「マズローの欲求5段階説」の内容これは人間の欲求を以下の5つに分け説明した心理学です。数字が低い順に並んでいて1番が充たされると次は2番に移るなど欲求は階段のように上がっていき、上がることでモチベーションも上がっていきます。生理に関する欲求安全に対する欲求社会的欲求承認欲求自己実現の欲求これに加えて、晩節のマズロー氏によると5番目にあたる「自己実現の欲求」は2つの階層に分割しているとされました。5-1.自己実現欲求5-2.自己超越欲求が追加され、より深く顧客の欲求を絞り込むことができるようになりました。一つづつクローズアップしていきます。1.生理に関する欲求「生理的欲求」とは、人が生存するために本能的に求める基本的な欲求です。食べること、眠ること、排泄することなどがこれにあたります。動物はこれらの欲求が満たされれば満足することが多いですが、人間はさらに高いレベルの欲求を求める傾向があります。人間がより高い欲求、例えば安全や社会的なつながり、自尊心、自己実現などを追求するには、まずこの基本的な生理的欲求が満たされている必要があります。満たされていない場合は、その解決が最優先となります。2.安全に対する欲求「安全の欲求」とは、個人が身体的、精神的に安全を感じ、経済的な安定や安心できる環境で生活することを求める心理状態を指します。乳幼児ではこの欲求が強く表れ、成長に伴い次第に他の欲求に移行します。職場での安全の欲求は、適切な安全対策、整備された労働環境、ハラスメントの不存在などによって満たされると考えられます。現代では多くの人が意識せずともこの欲求を満たしていますが、未満足な場合は不安やストレスを感じることがあります。3.社会的欲求「社会的欲求」とは、人が集団への所属や他者との愛情、友情を求める心理状態を指します。人は家族や友人からの受容や、職場や学校、地域社会などの集団に属することで、帰属感や愛情を感じ、これが満たされることで心の充実を得ます。スポーツチームやサークル、オンラインコミュニティも社会的欲求を満たす場となりえます。この欲求が不足すると孤独感や社会的な不安を経験することがあるため、人間関係の充実は心理的健康にとって非常に重要です。4.承認欲求「承認欲求」とは、他者からの評価や尊敬、地位や成就を通じて自己の価値を認められたいという心理的な欲求です。承認欲求はさらに2つに分けられます。低位の承認欲求:他者からの注意、評価、承認を直接的に求めること。これには名声や地位などが含まれます。高位の承認欲求:自己尊重や自己実現に関連し、自分自身の能力を認め、達成感を得たいという欲求です。低位の承認欲求は外部からの承認を重視しますが、高位の承認欲求は内面的な充足を目指します。人によっては、周囲からの承認を得ることで満足を得ることができる場合もあり、その程度や焦点は個々人によって異なります。5-1.自己実現欲求「自己実現の欲求」とは、自分自身の潜在能力や創造性を最大限に発揮し、理想とする自己を実現したいと願う心理的な動機です。個人が真に満足できる生活を目指すときに現れます。個人の才能を発揮し、キャリアで成功を収めたい、芸術や科学などで独自の足跡を残したい、理想の人間関係を築くなど、その表れ方は多岐にわたります.しかし、基本的な生理的欲求から安全、社会的欲求、承認欲求という下位の欲求が満たされていることが前提となります。自己実現を追求することは、個人が自分自身と向き合い、自身の可能性を追求する過程であると言えるでしょう。5-2.自己超越欲求「自己超越欲求」とは、自分自身の欲求を超えて、より広範な社会や他者の幸福を追求する欲求です。自己実現の欲求をさらに超えた概念です。具体的には、貧困や戦争の撲滅、ボランティア活動、慈善による支援など、自分の資源を社会の利益のために用いることを指します。自己超越欲求は個人の内面から発するものではなく、広い意味での人類や社会全体の向上を目指すものです。個人が社会に対してもたらす貢献や、より大きなコミュニティへの奉仕といった形で顕在化します。8.マズローの欲求、3つの分類マズローの欲求5段階説は、「外的欲求と内的欲求」「物質的欲求と精神的欲求」「欠乏欲求と成長欲求」という3つの視点で分類されます。これらは、「マズローの5段階欲求の3分類」として知られており、人間の動機付けや欲求の理解に役立てられています。外敵欲求と内的欲求マズローの5段階欲求は、欲求の対象が個人の内側か外側かという観点で分けられます。生理的欲求から社会的欲求までは外部環境に関連し、例えば食事や住居、社会的なつながりなど、外的な要素を満たすことを目指します。一方で、承認欲求と自己実現の欲求はより内面的で、個人の価値感や達成感、自己成長など、自分自身の内部に目を向ける欲求です。外的欲求が満たされた後、人は自然と内面的な充実を求めるようになるとマズローは提唱しています。物質的欲求と精神的欲求マズローの5段階欲求は、「物質的欲求」と「精神的欲求」という観点で分類することができます。生理的欲求と安全の欲求は物質的欲求に分類され、家、水、食料といった基本的な生存に必要な「もの」を求めます。これらは生命を維持するために不可欠です。対照的に、社会的欲求、承認欲求、自己実現の欲求は精神的欲求に属し、これらは物理的な生存に直接は必要ではないものの、人の精神的な充実感や幸福感に深く関わる高次の欲求です。これらは人の心の満足や自己成長に関連しており、個人の内面的な価値や満足を追求する欲求と言えます。欠乏欲求と成長欲求マズローの5段階欲求は、「欠乏欲求」と「成長欲求」という観点で分類することができます。生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求の4つは欠乏欲求に属し、これらは不足しているものを補おうとする欲求です。これらの欲求は、基本的には何かが欠けている状態からくるもので、その不足を埋めることに焦点を置いています。一方で、自己実現の欲求は成長欲求に分類され、自分自身をより高め、潜在能力を最大限に発揮しようとする欲求です。これは不足からくるものではなく、自己の可能性を追求し、より豊かな人生を生きようとする内発的な動機付けに基づいています。欠乏欲求が満たされた後に、人は自己実現へと向かうとマズローは考えました。9.「マズローの欲求5段階説」の活用法マズローの5段階欲求説は、人間の動機づけを理解するための幅広く応用可能な理論です。ビジネスの世界では、特にマーケティング戦略や組織マネージメントにおいて役立ちます。活用例を見ていきましょう。マーケティング戦略マーケティング戦略は、マズローの欲求5段階説の代表的な活用例です。マズローの欲求5段解説に当てはめることこそがマーケティングの基礎とも言われています。例えば、同じ商品やサービスでも、「どのような欲求を持っている人を顧客層にするのか」「どの欲求を満たすものを提供するか」は企業によって異なります。住宅を扱う企業の場合、低価格を売りにしたハウスメーカーや工務店がユーザーに選んでいるのは、生理的欲求や安全の欲求を満たしたい人です。一方、デザイン性の高さを売りにしている企業は、「家で個性をアピールしたい」などの承認欲求を満たしたい人をユーザーに選んでいます。マズローの欲求5段階説の下層から顧客のニーズを当てはめて分析し、自社の商品・サービスによって顧客のニーズを満たせていない部分を明らかにすることが可能です。マズローの欲求5段階説を用いることで、商品が売れやすい仕組みをつくることが可能になると言えます。組織のマネージメントマズローの5段階欲求説は、インナーブランディングという組織内でのブランディング戦略にも適用できます。このアプローチでは、企業理念を従業員に共有し、理解させることで、業務への熱意を高め、結果として企業価値の向上を目指します。ただし、従業員が企業理念を受け入れ、内面化するためには、彼らがどの欲求段階にいるかを理解し、それに合わせた施策を講じる必要があります。従業員のモチベーション管理マズローの5段階欲求説は、従業員のモチベーション向上にも応用できます。企業はまず、従業員の基本的な生理的欲求と安全の欲求を確実に満たすことが重要です。これらが満たされないと、ハラスメントの存在や不適切な労働条件などがモチベーションを低下させる原因になります。生理的・安全の欲求が満たされた従業員は、社会的欲求や承認欲求に注目し始めます。これらの欲求に応えるために、企業は適切な評価や挑戦的な仕事を提供することが有効です。結果として、従業員のモチベーションが高まり、望ましい企業風土が形成されるでしょう。10.まとめ「マレーの欲求リスト」と「マズローの欲求5段階説」を活用すれば、あなたのお客様や従業員の欲求を理解することができると思います。欲求を分析し、ビジネスの地盤を固めることで、後々の新規事業にも活用しやすくなります。これらのツールをうまく使って、あなたの事業がうまくいくことを願っています。